2023.05.10 11:10マリッジブルー クランの手のひらにあるのは、小さな頃であれば描くことすらなかった、今も到底信じられないような未来だった。自らの、勢いにも似た行動によって思いがけず受け取ることとなったその指輪に埋め込まれた石は、空や海に例えてもしっくりこない不思議な青色をしている。手のなかのそれを見つめた後、中指に嵌めて、少し迷ってからそっと外した。 リュールのパートナーとして公になった後も幾度となくクランは自室でひっそりと恥ずかしがったり落ち込んだりを繰り返していた。主に思い返すのはやはりリュールに想いを伝えたときのことで、「今になって思うとなんであんなことが言えたのか」とか、「あのとき神竜様が受け入れてくれなかったら今頃僕は…」などとそういったことを考えては羞恥を覚えてベッドに倒...