2020.07.19 14:38sugary晴天の昼下がり、ベレトは休憩時間に中庭の木の根元に寄り掛かって、木漏れ日の中でうたた寝をしていた。アッシュは幸運にもそんな彼を誰よりも先に発見した。幸い、他に人の来る気配もない。勘の鋭い元傭兵を起こさないように、足音を消して彼に近寄る。少し疲れていたのか、思いのほか眠りは深いようで彼は起きることもなく規則正しい寝息を立てている。アッシュは傍らにしゃがみこんで、ベレトの寝顔を覗き込む。(やっぱり、睫毛、長いなあ)いつもそう思っていながらも、他の級友達の手前じっくりと見ることはかなわないベレトの顔を、この機に乗じて見つめた。ベレトに、好意は伝えていた。生徒であり、子供であるところの自分は本気にされないだろうことも予想していた。だから「とても嬉しい、ありがと...
2020.06.26 12:32女神の塔舞踏会の夜、賑やかで煌びやかなダンスパーティーの間から抜け出したところで、ベレトはマヌエラに声をかけられた。「おぬし、かなり飲んでおったな」外に出て、葡萄酒の飲み過ぎで熱っぽい頬に手を当てると、頭の中でソティスの声がした。「なるほど、教員たちの姿が見えんと思うたら、別の場所で宴を開いておったんじゃな」「ああ。貴族の子息たちにとっては、将来の縁談に関わってくる場でもあるから」…らしい、とベレトは付け加える。縁談云々は、結婚相手探しに勤しむドロテアからの入れ知恵である。「暗黙の了解というやつか。教師が茶々を入れぬよう…お、あそこにも逢引きしている者らがおるのう」見ると、別のクラッセの生徒たちのようだった。舞踏会の会場に、アッシュの姿は見えなかった。先刻、教...